田我流 “Vaporwave” からの電波を受け取ったんで感想

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山梨県のHIPHOPクルー、stillichimiyaの田我流の新曲がMVつきで発表されたがこれは中々くらう。

あるのはチェーン店ばかり

 

デジャブの中をジャブジャブ

というリリックあたりでもわかるように、郊外の生活の繰り返す感じのこのリリックが地方に在住の経験があればスッと頭に入ってくると思う。

田我流がドンキなどの名前を出すと注意しなければいけない。1stアルバムのIce cityなんかでお分かりの方も多いかと思う。すぐにこれは問題提起型の楽曲だと自分は理解した。

このリリックとローファイ感のあるループおよび映像は深い共感という音楽のある種の究極的な目的とは少し逸れた「あーわかる」という生ぬるさに支配されており、不気味な中毒性がある。

田我流はこの曲を通じて「この街もvaporwave」と述べる。音楽ジャンルとしてのvaporwave自体はどこか不気味さや退廃的な空気を放つものではある。詳しくはググってください。

このバックトラックは音楽ジャンルとしてのvaporwaveとはやや外れているような気もするが、思えばbandcampなんかでたくさん見かける似たような、少し時間がたてばどれがどれだったかわからないvaporwaveという名前をこの曲に用いたのは、日本のどこでも似たような風景が量産される郊外での生活を表しているとして合点がいく。

vaporwaveのサブジャンルを網羅したこちらには

Vaporwave A to Z:蒸気波仮想世界地図―――Vaporwaveサブジャンルまとめ

注意してほしい。たびたび見られる誤解で、「Vaporwaveは小刻みなサンプリングを執拗にループさせることで、サイケデリックなトリップ効果を生み出す」というものがあるが、これは「リサフランク420 / 現代のコンピュー」のようなごく一部の楽曲にしか当てはまらない。多くのEccojamsは、トランス状態に至るはるか手前で唐突に終わってしまう。Adam Harperもこれについて指摘し、Vaporwaveとはむしろ「トランス状態からあなたの目を覚ますようなもの」と定義している。

と指摘されているように、vaporwaveがそのルーツの一部であるクラブミュージックやダンスミュージックの目的であるトリップ感やトランス状態から目を覚まさせるものであるという。

田我流のvaporwaveの、ノリきれないけどなんとなくだらだらとハマっていくカントリーライフと、それから覚醒させるような作用を自分は感じ取った。

 

この曲にはvapor=蒸気という言葉を人間の蒸発として表現してるリリックがある。こうやって暮らしていってある日爪痕も残せず蒸発する代替可能な人間として背景の一部になるのはなかなかゾッとする。何かこう、やるぞみたいな漠然としたものがふわふわと沸いてくる、まさに覚醒を促すvaporwave。

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