アナーキーのアルバムが1万3000円で出るので、普通じゃない価格設定の日本語ラップアルバムを振り返る。

0

Wu-tang Clanが限定1枚のアルバムを1億円でオークションサイトに出品したのは記憶に新しい。
そしてラッパー、アナーキーは次回作は自身が13000円の価値があると考え、その値段で販売するという。


アナーキーは音楽の値段が自分の意思とは違うところで決められているということに疑問を述べていた。
音楽の値段を決めるにあたり、まず原価を考えねばならない。この分は自分では決められない。録音やミックスダウン、デザイン、プロモーション、流通にかかる費用など。それらとどれだけ売れるかを読んだうえで、定価が決まりアーティトの取り分が決まる。
値段を決めるということは、それまででも裁量の範囲は狭いが、ストリーミングが勢いを増す昨今ではより厳しいものになっていく。
大体はシングル1000円前後、アルバムは2000円~2500円、DVD付きのアルバムは3000円といったような価格に落ち着く。そして、それがいわゆる普通の価格だ。

かつてそれらにとらわれずに限定や付属品をつけて付加価値をつけたり、あえて安くするなど自由な値段を設定していた先駆者たちを今一度思い出しておきたい。

ダメレコ(Da.Me.Records,DMR)1000円アルバムシリーズ


2000年代半ば、マイカデリックからソロでの活動をしていたダースレイダー、METEOR、環ROYの3名のラッパーにより設立されたダメレコの理念である「日常にもっと音楽を」に基づき1000円という手ごろな価格でCDを販売。手売りの自主制作盤や、配信では1000円という価格は特に珍しく感じなくなってしまっただろうが、当時の全国流通、タワレコやHMVに1000円のCDアルバムを出していたのは当時としては画期的であった。

ダースレイダーのこのころの作品によく出てくる”ガレージ”という言葉が表れているような、パワフルに荒々しい音質がレーベル初期リリースのころの特徴である。この音質によって低価格で多数のアルバムをリリースできたともいえるが、自分は狙いが当時はわからなかった。

日常に音楽を、のほかにもダースレイダーは自分たちのあとに続くようなラッパーたちが出てくることを期待した活動を展開していたが、あのラフな音質のアルバムは、CDを全国販売レベルのクオリティのミックスをするという想像も及ばないブラックボックスをいったんは忘れさえ、ラップをしているキッズたちに自分たちもできるかもしれないと感じさせるものもあったかもしれない。

 

低価格シングル

シングルのCDの相場は大体1000円。低価格のシングルを出してまずは聞いてみてくださいというものもあった。

SEEDA/WISDOM feat. ILL-BOSSTINO, EMI MARIA

2009年発売。価格は324円税込み。同年発売のアルバム”SEEDA”で引退を宣言していたSEEDAの復帰作。その間約7か月。トラックはOHLD、客演には2008年のアルバム街風のMic storyで共演したILL-BOSSTINOことBOSS THE MC(THA BLUE HERB)と、現在SEEDAの妻でもEMI MARIA。

オリコンデイリー5位、週刊8位を記録した。

マイクアキラ/TIME

2010年発売。マイクアキラの3333枚限定の4曲入りシングル。価格は500円

SEEDA , S.L.A.C.K. , ZEEBRA / White out

続く2010年、SEEDAにZEEBRAに加え、myspace,whalabout?のソロアルバム、PSGでのアルバムをリリースしたS.L.A.C.K.(現5lack)による416円(税込み)のシングル。SKY BEATSのリミックスを収録。

AK69の690円CDリリース

もちろん、名前にちなんだ価格にして遊び心とお得感を演出してもいい。AK-69の自身の名前にちなんだ690円のシングルはそれだ。

100 Feat.~Zeebra 25th Anniversary Box~

こちらは強気価格の例。活動25周年を記念し、おそらく最多の客演をこなしているであろうZEEBRAの客演集。CD4枚100曲入り。価格は10,000円、完全限定生産。アマゾンのマケプレなどでもさらにそれを上回る価格をつけていたりもするが、TSUTAYA DISCASで借りれるのを以前確認した。

この25周年企画は他にも25周年Tシャツにも使われるオフィシャルロゴコンテストを開催していた。

KREVA KX

2014年、KREVAのソロデビュー10周年を記念したベストアルバム。

DVD付の予約限定版は10,000円

THE FORCE 初回限定プレミアBOX (JBL社製ポータブルスピーカー”on tour”DABOモデル同梱)

2004年発売。DABO4枚目のアルバムの限定版。音響機器の名門、JBLのスピーカーが付属する。価格は16,800円。通常版は2500円、このスピーカー単体は12,800円。差額はこのFEEL THE FORCEという文字の入った特別仕様のためといったところか。なお、2004年発売なので当然bluetoothはなく、ラインミニ入力。

 

BUDDHA BRAND/病める無限のブッダの世界 ― BEST OF THE BEST (金字塔)LPサイズジャケット

通常版のCDが3000円程度にたいし、このLPサイズ限定版は定価5,040円である。まぎらわしいが、これはジャケットがLP(12インチのアナログレコード)のジャケットのサイズと同じだけで、中身はCDである。金字塔のアナログレコードのエディションは別のデザインのジャケットで存在する。さらに、このLPサイズ限定版は7インチのアナログレコードが付属していたのも紛らわしかった。

色々やりつくされた気もするが…

他にも、CPFなどのクラウドファンディング、T

シャツ付アルバムなども。アナーキーの次回作は見るところ付加価値系ではない。内容で勝負した価格というところがすでに何周か回っている気がするところ。しかし、話題性や企画性というものを意識した気配が値段設定の話から逃れられないところ。

ちなみに、レコードのアルバムは時期にもよるが2000~3000円ほど。レコード全盛期の1970年のあたりの3000円は消費者物価指数で換算すると現在の9000円ほど。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です