SHINGO2:DJ SHIN/PEARL HARBOR

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エミネムのサプライズリリースのアルバムのタイトルがその名も”KAMIKAZE”ということで。神風は日本書紀に載っているもので、元寇においてモンゴルを退けた強風や、太平洋戦争での神風特攻隊というものがあった。

単に神風といえば広義的ではあるが、エミネムの新譜の戦闘機(ビースティーボーイズのアルバムのオマージュっぽい)の絵と、和製英語のKAMIKAZEという文脈で自爆攻撃という意味合いなのは明らかで、眉をひそめている人たちがツイッター上でちらほら。

侮辱ととったのか、または肯定的なものとしてとらえるべきではないということか、色々あるけどまだリリックとか聞いてないのでなんとも。

 

対して、日本にもアメリカ人が眉をひそめてしまうようなアートワークジャケットの作品があった。shing02のshing02のEP、Pearl Harbor。最初は98年発売だけど、この写真のオリジナルジャケットで出たのは2007年発売の(10TH ANNIVERSARY EDITION) 。1941年、12月7日に行われた日本軍の奇襲攻撃により、沈没するアメリカ軍の戦艦アリゾナの写真だ。

この攻撃の成功を伝える大本営によって発表された宣戦の詔勅で国民はこれから地獄への階段の扉が開いたことも知らずに皆歓喜した。

なかよきことは美しきかなのパンチライで名高い白樺派の武者小路実篤は死んでもいいと思ったと述べていたり、批評家の小林秀雄は奇襲攻撃の戦果を聞き「名人の芸である」と称えた。とにかく坂口安吾や太宰治といった文豪をはじめいくらでもこの報せに浮かれ歓喜したことの話はでてくる。

そして、坂口安吾なんかはのちに堕落論を発表し戦争後をどう生きるかを示してみせたり、とにかく知識人たちはこの地獄への道が開いたことに歓喜し浮かれたことを忘れようとし、反省してみせているようであった。

そして、このshing02のパールハーバーを見てみる。リリックは英語と日本語のバージョンがあるが、shing02のオフィシャルサイトに掲載されている日本語バージョンのリリックを見てみよう。

前半部分は真珠湾を奇襲する攻撃機に自信をなぞらえたリリックで、後半に忘れるな42年強制収容(1942年に行われたアメリカの日系人強制収容)に続き歴史を新しく塗り替える作業12.7.1941! とラップする。加害した事実はいつまでも教科書に載ることで覚えていることであろう。がしかし、知識人たちがこの戦果に沸いたことを戦後50年をかけて忘れようとするような空気はあったのじゃないかなと思う。

 

まだ反省の色褪せた半世紀の終局というリリックがある。何より、表現する側もかつての文豪や知識人のようにどんな広い見識をもっていても戦争をあおる側になりうるということを忘れているのではないか。それこそ新世代の表現者であっても生まれながらにして忘れているのではないか。

shing02のドキュメンタリー映画でこの曲について語った部分を書いたブログを見つけた

 

「これらのイメージを使うことによって、僕が右翼であるという意味じゃないし、戦争を美化したり、何かを爆破したい訳じゃないよ。これはぼくにとってドキュメンタリーなんだ。ニュース番組やテレビ局のドキュメンタリーがイメージを使って公の場に情報を提供できるなら、なんで僕らみたいにインディペンデントのアーティストも同じことができないのか?って思うんだ。それに僕らはネガティブなプロパガンダのためにイメージを使ったりはしない。あくまでもクリエイティブになりたいだけで、もちろん過激な面もあるけど、どうしてもメッセージを伝えたかった」

 

これはドキュメンタリーと述べる。前述の小林秀雄は歴史は事実があったことを知るのではなく、その頃の感覚を知ることだと言っていたが、shing02の真珠湾攻撃を曲にすることで、ドキュメンタリーを体感し、自分はこういったことを考えた。

真珠湾の攻撃を題材にすることで誤解をうけるかもしれないということは念頭にあったようだが、K DUB SHINEも凶気の桜の歌詞で危険な右翼思想だと誤解されたこともあるとユリイカの日本語ラップ特集で言っていた。

K DUB SHINEはオークランドに留学していたし、shing02もオークランドで活動していた時期がある。

大和田 俊之, 磯部 涼, 吉田 雅史の共著の”ラップは何を映しているのか――「日本語ラップ」から「トランプ後の世界」まで”にはK DUB SHINEがオークランドという土地柄からそこに留学したこで獲得した日本人としてのアイデンティティについての考察を語っている部分があるのも興味深い。

ちなみに最初に発売のパールハーバー、オリジナルのアートワークが過激すぎた故…と帯に説明ががあるが真っ白である。

日本語ラップファンの間でホワイトアルバムといえば最初に発売のshing02のパールハーバーだとかそうでないとか。

なお、このshing02と共にパールハーバーを出したDJ SHINはKAMIKAZE BREAKS(神風音斬隊)というバトルブレイクス(スクラッチやジャグリングをするDJのためのレコード)を発売している。飛んでるのにプロペラ回ってないのが気になる。

 

 

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